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2010年4月25日日曜日

不思議な映画

久しぶりにDVDで映画を観た.
 ↓
Amazon.co.jp: 加藤隼戦闘隊 [DVD]
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B000BN9AES/mdmk-22/

不思議な映画だった.
一般的には「戦意高揚映画」とされている.
なのにちっとも高揚しない.

こちらは,先の大戦の結末を知っているから?
そればかりではない気がする.

駄作か?といえば,もちろんそんなことはない.
資料的価値を含めれば大傑作と言っていいだろう.
現に昭和19(1944)年の興行成績1位を取っている.
少なくともビジネス的には大成功作.

でも,観終わった後,脳裏に残っているのは南国の青い空と白い雲と,その下で藤田進が演じる加藤建夫部隊長の満面の笑み.
それから一人,また一人と愛する部下を失ってゆく加藤部隊長の底知れない憂い顔.

揚げ句の果てには,ヒーローである部隊長自らまで散華してしまう.
全くハリウッド的ではない.

では,敵たる米英軍側を鬼畜として描いているかといえば,そうでもない.
日本軍に来てもらって現地民が大歓声!みたいな場面もない.

ストーリー自体あるようで,ない.
類いまれな戦技と人徳をもつ部隊長の率いる飛行第64戦隊の日常が,ひたすら淡々と描かれてゆく.
ただその「日常」は,私たちの日々過ごしている「日常」とは違う.
大部分同じなのだが,違う.

それで本来ならば,この映画は日本国民をその「日常」へと勧誘すべき任務を帯びてこの世に出たはずだが,カメラはどこまでも中立を保とうとする.
誘惑するでもなく,もちろん突き離すでもなく.

だからこそ,こうして21世紀の今でも定価が付いて販売されている映像作品になり得たのかもしれない.
単なるプロパガンダ映画では,決してこうはならなかったはず.

ウヨクと言われる人もサヨクと言われる人も,戦争反対派も戦争賛成派も,そして大多数のどちらでもない人も,ぜひ観てほしい.
そこにはつい六十数年前の「日常」が描かれている.
何を感じるかは観た人次第.

不思議な映画である.

【参考】
加藤隼戦闘隊 - Wikipedia


元はといえば半分話: 小惑星探査機「はやぶさ」つながり.
なぜ小惑星「イトカワ」へ「はやぶさ」が飛んでいくのか,その辺の話がわかると面白いかもしれない.




陸軍一式戦闘機「隼」やら,九七式重爆撃機やら,果ては連合軍機に至るまで,実機が惜しげもなく撮影に使用されている.
エルロンの上下,高度計の針の回転,翼端灯の明滅,九七式輸送機内での空挺隊員の状況など,ディテールだけでも興味深い.

目的はどうあれ,アジアにおいてこれらの「機械」を自前で設計・大量生産・運用できたのが日本だけだったのは事実.




あの円谷英二による特撮技術も驚異的.
一部を除いて,言われなければ特撮とはわからない.
ストーリーへ完全に溶け込んでいる.

そうやって考えると「ゴジラ」「ウルトラ・シリーズ」は円谷英二にとって「加藤隼戦闘隊」の続編そのものだったのかもしれない.
少なくとも音楽にはオマージュを感じる.




何はさておき,藤田進の笑顔はかっこいい.
戦前の日本人にもあんな顔立ちの人がいたのだなぁ,としみじみ.




映画はフィクションであるが,加藤建夫部隊長の人物像はかなり史実に基づいているらしい.

あんな上司ならば死んでもいい,のか.
あんな上司でなければ死ねない,のか.

現代の社会人にとっても,この映画から得るものは大きい.
部下にとっても,上司にとっても.



【関連エントリ】
半分話: 前世紀前半のファンタジー
半分話: 小惑星探査機「はやぶさ」特設サイト開設
半分話: 上司の帰りどき